夕方、太陽と建物を交互に見ながらさっき向こうに渡ればよかった・・・と軽く後悔していた私に誰かが呼びかけた。
慌ててブレーキをきつく握る。
私の愛車大福2号はタイヤと地面が激しくこすれる音をたて、停まった。
「トマちゃん!トマちゃんでしょ?トマちゃんだよね??」
そうなんども名前を連呼されたのが先なのか、ブレーキを握りながら振り返ったのが先なのか、一瞬の出来事なのでそんなことはわからない。とにかく、振り返るとそこには自転車にまたがった女子高生が立っていた。
「トマちゃん!」
まだ私の名前を呼び続けている。
失礼なような気がしたが私は彼女の顔を凝視した。
メガネをかけていればすぐに気付いただろう。学校へ向かう為、裸眼で自転車をこぎまくっていた私はしばらくたたないと気付かなかった。
「なっち?」
そこには私の妹が立っていた。
「髪切った。」
妹は突然そう言った。
「あぁ、そう。トマは今からテストだから。行くね。バイバイ。」
髪形のことには少しも触れずに、私は走り去った。
正直なところ、視界は常にボヤ−っとしているので髪形なんて見えていなかった。ぜひとも早いうちにコンタクトにしたい。と決意新たに影のない道を、テストを受けに急いだのだった。

       秘密へ続く。

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